食糧危機というバズワードとネット通販での機材高騰から、水耕栽培ブームをひしひしと感じます。
そんな中、我が家でも更なる収穫量を目指し、循環式水耕栽培システムの導入を画策中です。
ネット上でよく見る「塩ビ管(または塩ビ継手)を使った循環式水耕栽培装置の作り方」が一見優れたアイディアのようですが、突き詰めていくと、鉛浸出による健康被害の恐れがあり、良くなさそうであることが分かったためメモします。
塩ビパイプは家庭用水耕栽培装置には不適格である
塩ビパイプのJIS規格について
まず、塩ビ管には、以下のJIS規格が存在します。
- JIS K 6741 ・・・硬質塩化ビニル管(排水、農業用)
- JIS K 6742 ・・・水道用硬質塩化ビニル管(上水道用)
- JIS K 6743 ・・・水道用硬質塩化ビニル管継手(上水道用)
このうち、軽くて安価で加工しやすいのはJIS K 6741で、これがネット上の水耕Blogや動画等でよく使われています。ただしこれは、鉛を多く使用している排水用であり、飲食するものに使うものではありません。
鉛が体に悪い、というのは、よく聞く話だと思います。
ちなみに、排水用の塩ビはこんなやつです。
塩ビパイプのJIS規格には現状、安価かつ安全な、水耕栽培に都合のいいものが無い
で、水道用のものを使えばいいという話になるのですが、問題は、
- 水道用のものは耐圧や耐衝撃性能が求められており、無駄に肉厚(VP管)になってしまう
- 水道用で径40㎜より上のものは、通販サイトにも売っていない(恐らくホームセンターにも売ってない。恐らく一般人がそれより太い水道管の工事をすることが無くニーズが無いため。ちなみに径40㎜では、作物をかなり選ばないと速攻で根詰まりしてしまう。)
結局、ネットで手軽に購入できる水耕栽培に適した肉薄(VU管)で鉛フリーかつ径75㎜以上という製品が見当たりませんでした。
※ただの調査不足で、もしかすると存在しているかもしれません。その場合教えていただけると嬉しいです。VP管であれば下記のようにセキスイ等のカタログにあるはあるんですが・・・
セキスイ 農業用エスロンパイプ(農業用硬質塩化ビニル管)
https://www.eslontimes.com/system/items-view/265/
要するに僕的には、塩ビパイプというものは、「安価で簡単に購入、加工ができ耐久性が高く、しかも人体に安全」という要求を満たすことができない=水耕栽培には適していないのではないか、という結論です。
(出費と加工の手間も惜しまないのであれば、水道用VP管の径100㎜等を取り寄せて使うのもありかもですが・・・、安くて安全な他の材質を使わない理由が無いかと。)
塩ビパイプ水耕栽培が人体に危険かも?という根拠
端的に言うと、溶液中に鉛が溶け出し、植物が吸収、それを食べた人の体に蓄積するのでは?という懸念です。
水道用塩ビパイプのJIS規格での検査基準について、
鉛・・・0.008mg/L以下 とのことです。
日本水道協会 水道用硬質ポリ塩化ビニル管検査施行要項
http://www.jwwa.or.jp/kensa/kensakitei_file/kensakitei_070.pdf
また、水道法では飲料水の鉛の濃度は、0.01mg/L以下と定められているようです。
植物は吸収した鉛の大半を根に蓄積するが、葉、茎等にも少なからず蓄積する
植物の鉛の蓄積について、下記の研究では、
水耕栽培したコセンダングサの根における鉛の蓄積https://www.jstage.jst.go.jp/article/dohikouen/56/0/56_290_1/_article/-char/ja/
地上部・・・28.5mg/kg
根・・・45.8g/kg
という例があるようです。
このケースでは、ほぼ根に蓄積し、水耕栽培で食べる地上部にはあまり蓄積しないという結果のようです。
ただ、単純に地上部28.5mg/kgという数値を水道法に当てはめると、基準値の2850倍オーバーという、れっきとした鉛汚染と言える状況になりそうです。
ちなみに鉛は一旦人体に入ると排出が難しく、蓄積していくため、極力摂取しないことが重要であり、また害も発ガン性、知能の低下、腎臓障害などQOL低下に直結しそうなものが多くあるようです。
健康になるために無農薬野菜を作っているはずが、体に鉛を蓄積しまくるというのは全くもって本末転倒というものです。
一般用塩ビパイプによる鉛浸出の実例
地下水観測井戸用塩化ビニル管からの鉛の溶出
https://www.pref.nagano.lg.jp/kanken/johotekyo/kenkyuhokoku/hozen/documents/8-2.pdf?
一般用塩ビパイプを使うと、やはり鉛は水に、ガンガン溶け出すようです。上述の水道用のJIS規格と比較しても大幅に溶け出しまくっています。OUT!!
代替品・代替案
①塩ビパイプ、塩ビ継手の内部をコーティングする
耐水性、耐久性が高く、有害物質の浸出が無い塗料が安価に手に入れば、排水用塩ビパイプであっても安全に使用できそうです。
②鉛などの有害物質のみを吸着、無害化できる製品を探す
そんな都合の良い製品があるのか?(活性炭などは必要な栄養分、ミネラルも見境なく吸着しそう)と、果たして、有害物質は鉛だけなのか?とも。
③塩ビパイプ使用をあきらめる
塩ビパイプ程の遮光性、耐久性、経済性を兼ね備えたものを見つけるのは中々骨が折れますが、所詮は家庭用の趣味用途なので、現在、100均のザルやコンテナである程度強度があるものを探し、ちゃんと遮光すれば良いのでは?と考えています。ちなみにAmazonやアリババでよく見かけるLAPONDの水耕栽培キットのパイプも、PVC(=塩ビ)製です
(2023/12/10追記:食品グレードのPVC-Uを使用していることの表記がありました。)
確認しているわけではないのですが、海外製なので、日本の水道管の基準は満たしていないのでは・・・と心配になります。
まとめ
僕はDIYや水質基準についてずぶの素人ですが、あらためて、ネットの情報を鵜呑みせず自分で調べることで見えてくることが多いなと感じました。
自分だけではなく家族が口にする野菜を作る、ということで、世間的にもこの分野についてはもっと神経質になってもいいのではと思います。
というわけで、色々と躓いているものの、この夏中に循環式を始めたいため、引き続き調査&開発していく予定です。
また塩ビ自体は加工もしやすく安価でDIYにうってつけなので、今後、塩ビメーカー各社から耐圧、耐衝撃性など水道に求められる性能をそぎ落とした、水耕栽培にジャストフィットする製品がたくさんリリースされるといいなあと思いました。
また僕は、水道管の規格、水耕栽培等について、本当にずぶの素人ですので、上記内容に間違いなどありましたら、コメント欄でツッコミしていただけると嬉しいです。
おしまい。
配管工ですけど
そもそも塩ビの鉛成分が溶け出すのは考えられないです
普通に工場などは口に触れる物を洗う水等でvuで配管しますし
ハウス内の給水に至ってはsgp、亜鉛で塗装したパイプを使います
VUの75以上のサイズは普通にあります
ネットで得た中途半端な知識で
ガセネタを流すのはやめた方がいいですよ
VUかVPではなく、JIS規格からの考察になりますが、そのあたりどうでしょうか。
また、一般的な排水用のVU管から鉛が溶け出すことは、下記で明言されています。
https://www.pref.nagano.lg.jp/kanken/johotekyo/kenkyuhokoku/hozen/documents/8-2.pdf?
塩ビ管水耕栽培はじめようと思ったらここにたどりつきました。
VUより高額で加工が大変だけど、HIVPや水道用VP管のΦ100で始めようかな…
工場で口に触れる物を洗う水で使うVU管ってなんだろう。
単に工場もしくは設備工事をした人間が鉛に対して危険性を認知してないだけでは?
単純にSGP-VBは水道用の硬質塩化ビニルライニング鋼管なのだから大丈夫なのでは?
亜鉛メッキって管の外側だから関係ないし。
ホームセンターで取扱いが無い物は近くの管材屋さんに連絡すれば個人販売もしてくれると思いますよ。
塩ビ管、継手は基本的にホームセンターより安く買えます。現金でも。
割と各方面の論文読み漁ったのですが、
個人的な結論としては、塩ビパイプは水耕栽培に向いていないのではと思い至りました。
(海外ですと鉛を使用した塩ビパイプ自体がかなり厳しく規制されているようです。)
元々水耕栽培で塩ビパイプが使われ出した理由としては、
排水用のVU管が、どこにでもあるホームセンターで安価に買えて、
加工がしやすく劣化もしにくいというところだったと思うのですが、
形状的に特に優れているわけでもなく(継ぎ目からの漏れや、穴から溢れたりする危険性)、
そもそも食品衛生上向いていないため、
最近はトロ船みたいなもので良いのでは?と思っております。
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コセンダングサは鉛を蓄積しやすい性質を持つとのことですが、一般的に水耕栽培で扱う葉物野菜の蓄積しやすさには触れないのですか?
また鉛の溶出では、一日水に漬け込んだ後水換えした場合は精々0.025mg/L程度と、水道法の基準値0.01mg/Lと比べてもそれほど変わらないようですが。この実験は1ヶ月間でしたが、常識的に考えて溶出量は時間が経過すればするほど低下していくのでは?
アメリカの「健康に影響を与え得る鉛濃度」は0.025mg/Lを基準値としています。日本の水道法の基準は世界的に見ても厳しいです。水道はそのまま飲用する事を想定していますが、水耕栽培の場合は植物による蓄積率も考慮すべきで、今ある情報だけで「大幅に溶け出しまくっています。OUT!」とするのは恣意的かなと思いました。
もし気になるなら鉛の検査キットが125回分2000円で売っているので、それで観察してみてはどうでしょうか。
VEを使うための代替案もなんか微妙だなと。。折角水耕栽培をやるならカラシナやゼラニウムを一緒に育てるのはどうでしょうか。カラシナとゼラニウムは鉛をよく吸収するため、相対的に本命の葉物野菜への吸収量が減るという技術で、これをバイオレメディエーションと言います。内側に塗装するより幾らかいいでしょ?
因みにほうれん草や小松菜等の小型の葉物やハーブ等なら直径60mmあれば十分で、トマトやオクラ等根張りの良い野菜は根腐れ防止の為にバケツにブクブクでやるのが一般的です。そもそも75mm以上の配管が必要になることもないですが、通販で普通に4M8000円程度で売っていますよ。ホムセンになければ店員に言えば取り寄せてくれます。
因みに降水中の鉛濃度は都市部で0.04mg/Lです。一般用塩ビでも一日流水にさらせば雨水以下の鉛濃度に出来るので、そんなに気にしなくて良いのでは?と。
本投稿の意図は、鉛の危険性を踏まえ、
安易に鉛入りVU管を食品の製造に用いることに対し警鐘を鳴らすことでした。
実際のところ、塩ビ管を用いた水耕栽培における下記のデータは、
論文検索でも見当たりませんでした。
・(仮に塩ビ管を数ヶ月間流水で処理したとして)掛け流しではない滞留させた溶液中にどの程度の量の鉛が溶け出すのか?
・その鉛のうち、どの程度が作物に取り込まれるのか?
・その作物を摂取し続けた際、人体に問題が出るのはいつごろか?
ゆえに現状、塩ビ管水耕の安全性は確認できていないという理解です。
(そして、恐らく危険なので、時間とコストをかけて無理に安全性を証明する必要も無さそうというスタンスです。)
結論、食品を製造するのであれば、それに準じた資材を使用しましょうという落とし所かと。
それを覆すのは至難と思います。
(が、数値で示していただけるのであれば、情報提供は大歓迎です。)
ちなみに、
>因みに降水中の鉛濃度は都市部で0.04mg/Lです。
→常飲した場合、乳児・小児の場合わりとすぐに障害が出るレベルのようです。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-7l.pdf